トリミングサロン開業を目指すなら、必要な資格や条件をしっかり理解しておくことが重要です。とくに動物取扱責任者の資格は、取得しないとサロンの独立開業ができない必須要件となります。
本記事では、トリミングサロン開業に欠かせない動物取扱責任者の資格要件や実務経験、さらに施設要件や申請手続きのポイントまでわかりやすく解説します。今後の開業準備をスムーズに進めたい方は、ぜひ最後までご覧ください。
トリミングサロン開業に必須の資格
トリミングサロンを独立開業する際、動物取扱責任者の資格を取得することが法律上の必須条件です。これがなければ営業許可が下りず、開業そのものが不可能になります。
また、多くのオーナーが自ら動物取扱責任者となるケースがほとんどです。そのため、トリミングサロン開業をサポートしてくれる制度や学校、資格試験などの情報も事前にリサーチし、確実に要件を満たせるようにしておきましょう。
動物取扱責任者の取得要件
動物取扱責任者の資格を得るには、定められた要件を満たす必要があります。大きく分けて、以下の2つのステップをクリアしなければなりません。
1. 動物取扱責任者として認められる資格条件を満たす
2. 第1種動物取扱業(「保管」区分)の申請をし、施設要件をクリアする
ここで重要なのは、動物取扱責任者の要件を満たしていないと第1種動物取扱業の申請ができず、当然トリミングサロンの開業も許可されないということです。
動物取扱責任者の資格を取得する条件
以下のいずれかに該当する人が動物取扱責任者になれます。特にトリミングサロン開業を目指す方は③か④の要件をクリアするケースが一般的です。
- 獣医師
- 愛玩動物看護師
- 常勤職員として半年以上の実務経験+所定の学校を卒業
- 常勤職員として半年以上の実務経験+所定の資格を取得
- 1年間以上の飼養に従事した経験+所定の学校を卒業
- 1年間以上の飼養に従事した経験+所定の資格を取得
上記のうち、方法③や④は比較的取り組みやすいと考えられています。理由として、半年以上の実務経験に加え学校卒業や資格取得が実現しやすいからです。
トリミングサロン開業のための実務経験
動物取扱責任者の資格要件の中でも、多くの方のハードルとなりやすいのが「半年以上の実務経験」です。トリミングサロンの開業をスムーズに進めるためには、まずこの実務経験がしっかりカウントされる勤務形態かどうかを事前に確認しておきましょう。
実務経験は第1種動物取扱業として届出を出しているサロンやペットショップで行わなければ、証明が通らない可能性があります。出張トリミングなど未届出の業者の場合は実務経験と認められないので、必ず事前に勤務先に確認することをおすすめします。
正規雇用とアルバイトの違い
半年以上の実務経験については、原則として「職員として勤務」する必要があるとされています。職員とは正規雇用を想定しているため、アルバイトはカウントされないとされがちです。
しかし、実際にはアルバイトでも週5日・1日6時間以上など、正社員と同様の就業実態であれば認めてくれる自治体もあるようです。管轄の保健所や自治体によって解釈が異なる可能性がありますので、働き方が不安な方は直接問い合わせてみてください。
実務経験の証明方法
一般的には以下のような書面で実務経験を証明します。どの書類が必要かは自治体によって異なる場合がありますが、退職証明書や在籍証明書などは早めに準備しておきましょう。
- 実務経験証明書
- 在籍証明書
- 退職証明書
勤務下の事業者名称や勤務期間、就業時間、雇用形態などが正確に記載されていることが求められます。
資格選択でトリミングサロン開業をサポート
動物取扱責任者の資格要件を満たすには、所定の学校の卒業もしくは所定の資格の取得が必要です。これらが実務経験と結びつくことで、開業への道が開けます。
たとえばトリマー専門学校を卒業すれば、すでに所定の学校卒業要件を満たせるため、就職先で半年働けば資格が取得できるケースが多いです。その一方で、トリマー塾や独学で技術を身につける場合は、専門学校卒業と同等と認められないため、追加で所定の資格を取る必要があります。
主な認定資格の例
次に挙げる資格は、トリミングサロン開業に関連して動物取扱責任者の要件として認められる場合があります。ただし、すべての種類の動物や業務に適用されるわけではないため、必ず管轄の動物行政担当部署に確認しましょう。
- 愛玩動物飼養管理士(1級・2級)
- 愛犬飼育管理士
- 愛護動物取扱管理士
- 家庭犬訓練士(初級、中級、上級、教師)
- 家庭動物管理士
- 公認訓練士
- 動物介在福祉士(初級、中級、上級、教師)
- 動物看護師(初級、中級、上級、教師)
- トリマー(初級、中級、上級、教師)
- ペットシッター士
資格の合格率は80%以上のものもあり、比較的ハードルが低いケースも少なくありません。ただし飼養動物の種類や、対象となる業務範囲によっては認められない資格もあるため注意が必要です。
所定の学校卒業か資格取得かの判断
トリマー専門学校を卒業していれば就職先が見つかりやすく、6ヶ月の実務経験を積むことも容易になります。一方、中退者や注目度の高いトリマー塾などを卒業した場合は、認定校として認められないケースがあり、別途資格取得が求められます。
もちろん、資格取得のほうが費用や勉強時間が抑えられる可能性もあります。しかし、専門学校で学ぶより就職が難しい側面もありますので、ご自身のスキルや経済面としっかり相談して決定することが大切です。
トリミングサロン開業のための準備
いざ開業する段階になると、資格の他にも施設や設備の要件を整える必要があります。さらに、動物取扱責任者講習を受けるタイミングや事前の申請準備によっては、予定していた開業日が延期される可能性もあるでしょう。
とくに講習は月に1回程度しか開催されないことが多いため、余裕を持って受講予約をすることをおすすめします。開業時期と講習日程がずれてしまうと、スケジュールに大きな支障をきたします。
第1種動物取扱業の申請と施設要件
第1種動物取扱業の中でもトリミングサロンの場合は「保管」に分類されるため、店舗の施設要件を整える必要があります。実はこの要件が細かく、ケージや空調、遮光、動物死体保管場所など、一見サロンに関係なさそうな設備まで求められることがあるのです。
申請時には、保健所の担当者が店舗をチェックし、問題なければ許可が下ります。どのような設備が必要かは自治体によって微妙に異なる可能性があるため、「不明点は即確認」という姿勢が失敗を避けるコツとなります。
動物取扱責任者講習と開業のタイミング
動物取扱責任者の資格要件を満たしたとしても、動物取扱責任者になるには年1回の講習を受ける義務があります。開業前の講習日程を誤って見落としてしまうと、お店を完成させても実際に営業できない事態が起こりかねません。
逆算して見ても、講習の申込みはできるだけ早めに行うことを意識し、開業準備に合わせて計画的に受講するようにしましょう。
必要設備と施設要件のチェックリスト
トリミングサロンを開業する際、スムーズに第1種動物取扱業の許可を得るには、必要設備を整理しながら要件を満たした店舗環境を作ることが大切です。必要な項目は細かいですが、一つずつ整えていきましょう。
どの程度の設備が必要かは、取り扱う動物の数やサロンの広さによって異なります。また、自治体の担当者が来店した際に、設備の設置状況や安全性を確認して問題ないと判断されれば許可が下ります。
ケージ・消毒設備の基本
トリミングサロンでは、一時的に飼い主から犬を預かります。この「預かる」という行為が「保管」にあたるため、ケージの設置は必須です。さらに、転倒防止策を取っているか、水周りや消毒設備なども重要な確認対象です。
ケージは床面が排泄物をもらさないようになっているか、上部が通気性に優れているか、優しく扱っても破損しない十分な強度があるかなどが要チェックポイントとなります。また、ふだん使う消毒液や消毒設備もしっかり用意し、清掃・消毒が容易な構造になっているかを確認しておきましょう。
死体保管所と災害時のフード保管
トリミングサロンには、死体保管所の設置も求められます。といっても常に用意しなければならないわけでなく、「緊急時にはこのケースを利用する」といった具合に代用できるものがあれば、問題ないケースがほとんどです。
また、災害時のためにドッグフードなどの飼料保管所の設置も必要です。これは、長期的に犬を預かるホテル機能がなくても要求される場合がありますので、念のためフードを1袋は保管しておくなどの対策をしておきましょう。
遮光や空調
室内に直射日光が入る場合は、適切に遮光できるカーテンやロールスクリーンを設置する必要があります。夏場であれば犬の体調面や熱中症リスクを考慮し、風通しや温度管理をしっかり行うことも欠かせません。
動物取扱業の判断では、このように犬が快適に過ごせる環境を作ることも求められます。換気扇の取り付けやエアコンの設置なども含めて、快適性と安全性を高めることが重要です。
まとめ
トリミングサロン開業には必須の動物取扱責任者資格と、半年以上の実務経験、そして施設要件など多岐にわたる準備が必要となります。十分に計画を立てて取り組むことで、スムーズに開業を実現できるでしょう。
まずは動物取扱責任者の要件を満たし、講習を受講し、必要設備を整えることから始めてみてください。そうすることで安心して「トリミングサロン開業」を進める大きなサポートとなるはずです。